サイトスワップ
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入門
議論
第16回
- 名称
- SSS0016
- 日時
- 2017/09/23 11:30~13:10
- 場所
- 福岡国際会議場4F小会議室
- 参加者
- 13名
概要
セバスちゃん | レインボーサイトスワップ、ダイアグラム |
加藤 | サイトスワップアート |
西野 | サイトスワップのセミラティス |
森下 | スリンキーに見るプロブレムの他道具への一般化 |
加藤 | フラクタルなサイトスワップ |
レインボーサイトスワップ、ダイアグラム
サイトスワップには手の位置のような情報が含まれていません。これは利点でもありますが、特に明示したいときはどうしたら良いでしょう? そこで、位置を表す X,Y,Z 座標をRGBカラーモデルの R,G,B の値と読み替えて、1つの座標を1つの色に対応させます。この色でサイトスワップの数字を塗れば1投ごとに投げる位置が指定できます。これをレインボーサイトスワップと呼びます。赤なら左下前方!のように、3次元の位置が直感的にイメージできるのが強みです。キャッチとスローを別の位置で行なうときは1つの数字を上下分割して2色にします。
ダイアグラムノーテーションの線をレインボーに塗り分ける使い方もできます。様々な応用が考えられ、色の示すものを位置の代わりにクラブの回転方向に当てても良いし、透明度も入れてRGBAにすれば4次元ジャグリングを表すことも可能です。
サイトスワップアート
3カスケードのサイトスワップは 3 ですが、これは 33333... という無限数列を簡略化したものといえます。いろいろなサイトスワップでこの無限数列を 図示する方法 が提案されました。数列 {ai} i=1,2,... に対し2次元極座標上で点 (ri, θi) を対応させます。ただしここで
r0 = 0, | ri = ri-1 + C |
θ0 = 0, | θi = θi-1 + ai × D |
[C, D は定数] |
という式で点を決めます(つまり、スローの高さを回転角度の増分に、スロー時刻を原点からの距離に対応させます)。点列を線でつなぐと、定数 C, D によっても姿は変わりますが、例えばカスケードならきれいな渦巻き型になったり、他のサイトスワップではまた違った模様になったりして楽しめます。
サイトスワップのセミラティス
サイトスワップという言葉のもともとの意味は「投げる高さを変え、ボールの落ちてくる時刻を入れ替えること」ですが、ここでははっきり区別するためにこれをサイトスワップ変換と呼びます。たとえば 333 というジャグリング数列の1投目と2投目の落ちる時刻を入れ替えると 423 になります。
さて、有限周期的なジャグリング数列について、それぞれの数字の平均がボールの数になるという定理は、このサイトスワップ変換で基本パターンのジャグリング数列に変換できることで証明できそうです。なぜならサイトスワップ変換はボールの数も、今考えている平均も変えないからです。懸念は、サイトスワップ変換を繰り返して本当に一意に基本パターンへたどり着けるか? というところです。これを肯定的に解決したという報告が今回の発表です。
まず、交換は隣接する数字に限定し、巡回サイトスワップは同一視します。そして、一番大きい数字を小さくする変換のみを考えます。ここで「各数字の自乗の和」という量を考えると、簡単な計算でこの量は必ず減っていくことがわかります。したがって、この変換でパターンを繋いでいくと、数学的にはセミラティス(半束)という構造になっていることがわかり、最小元は当然基本パターンなので、問題は肯定的に解決されました。議論では、分かりやすくグラフを書いてみると面白いかもしれない、思いつきサイトスワップで状態数を少なくするようにすると基底になるのに似ている、などの意見が出ました。
スリンキーに見るプロブレムの他道具への一般化
スリンキーは今年のワークショップにもあった、長いバネ状のおもちゃです(slinky juggling で動画を検索しよう!)。いろいろな技があるわけですが、何か法則性がないかと考えます。そこで、パッシングのコーザルダイアグラムにおける「プロブレム」の考えが使えるのではないか、さらに他道具でもこれが使えるのではという発表でした。
詳細は池田さんのジャグリング教本が参考になりますが、自分が手の数以上のクラブを保持しているからジャグリングしなくてはいけないので、余分なクラブ、つまりプロブレムを相手に渡すためにパスをして解消するという考え方です。スリンキーのプロブレムは何か? それは、バネが両手の長さより長いので縮めておかなければならない部分ができる、ということです。これを解消するため、このプロブレムを右手と左手で受け渡す行為がスリンキーの技になります。この考えは技を俯瞰するのに役立つかもしれません。
ところで、プロブレムの考え方は他の道具にも使えるのではないでしょうか? プロブレム解消方法は、例えばトスなら「投げて手を空ける」「マルチホールド」などで、デビルスティックなら「弾き返す」「回転を保つ」「バランス」など、シガーボックスなら「挟む」「載せる」「投げて手を空ける」といったように考えることができます。このような「解消」は定義の仕方によって大きく変わりますが、ともかく「解消」によりプロブレムを移動させ、先送りにするというのがいろいろな道具のジャグリングに共通しているのではないか、というアイデアでした。これに対し、物体は自然には落ちる、人間はそれに抗うという捉え方があるという意見が出されました。
フラクタルなサイトスワップ
「サイトスワップアート」の発展系の発表です。サイトスワップアートは周期的なパターンに限らないし、絵的なものなので、フラクタルと相性が良さそうです。フラクタルなサイトスワップを作れば、きれいなアートになるかもしれません。
フラクタルの例として、コッホ曲線というものがあります(絵を調べてみてね!)。コッホ曲線の作り方は「縮小、コピー、貼り付け」のように絵的に表されますが、サイトスワップは数列で表されるので、数列としてコッホ曲線の構成法を作らないとマネができません。これにはうまい方法があります。ペンでコッホ曲線を書くとき、線分の進む方向は60度ごとに6方向あるので、それを 0,1,2,3,4,5 と名付けるわけです。例えば、最初の直線は 0、次の山ができる段階では 0150、その次は 0150120154050150 と表されます。つまり次の段階は「0 → 0150、1 → 1201、…、5 → 5045」と変換する生成規則で作れるわけです。
コッホ曲線の数列はジャグリング可能ではありませんが、同様な手法でジャグリング可能な数列を生成する規則を見つければ良いことになります。これはなかなか難しい要求ですが「0 → 1、1 → 20、2 → 201」という生成規則で 0 を最初の段階とすればうまくいきそうだというのが見つけられました。これは1ボールサイトスワップです。サイトスワップアートでもいかにもフラクタルっぽい見栄えになります。発表では他にもジャグリング不可能になる生成規則、退化して繰り返しになる生成規則、3ボールの生成規則などが披露されました。