サイトスワップ

シンクロ

シンクロとは、左右の手に持ったボールを同時に投げるパターンのことです。通常のサイトスワップは左右交互に投げますが、シンクロでは常に左右同時に投げることになります。

シンクロパターンは小括弧とコンマを使用して (2,4) のように記述します。コンマの左右がそれぞれの手に相当しますが、どちらがどちらの手でも構いません。ここでは左側が左手、右側が右手を表すこととします。数字は通常のサイトスワップと同様に「今投げたボールを次に投げるまでの時間間隔」です。(2,4) は左手で 2、右手で 4 のパターンを投げることを意味します。

シンクロの基本的なルールは次の2つです。その他は通常のサイトスワップの規則に従います。

  • ボールは2単位時間ごとに、左右同時に投げる
  • 反対側の手に向けて投げるときは数字の後に x (アルファベットのエックス)を書く

最初のルールは通常のサイトスワップとの整合性を取るためです。一度右手で投げてから再び右手で投げるまでには多少の時間を必要とします。サイトスワップではこの間に左手の投げが入りますが、シンクロではそれが入りません。

(2,4) の投げ方を見てみましょう。シンクロでも繰り返しは省略されますから、本当は (2,4)(2,4)(2,4)(2,4)(2,4)… と無限に続くパターンになります。分かりやすくするために、左手と右手を縦方向に並べます。

時刻 : 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
左手 : 2 2 2 2 2 2
右手 : 4 4 4 4 4 4

ボールを投げるのは2単位時間ごとなので、偶数時刻は休みです。そしてこのことから必然的に

  • シンクロに登場する数字は全て偶数

という性質が導かれます。また、2単位時間ごとに両手でボールを投げるため、そのボールは左右どちらの手に向けて投げることも可能です。実際にどちらに投げるかを区別するために、2番目のルールがあるというわけです。

アルファベットの x はサイトスワップでは数字の 33 を意味していました。しかしシンクロでは x は「反対側の手に向けて投げる」という別の意味になります。シンクロの場合、数字としては偶数しか登場しないので、奇数である x が混ざったとしても混乱することはありません。また、1回の投げは数字1つで表されることから、「単独の x は数字、数字の後の x は反対の手に向けて投げることを表す記号」というように明確に区別することができます。

(2,4) をもう少し解析してみましょう。時刻1で左手に持っているボールの色を赤だとすると、それは2単位時間後の時刻3に(x が付いていないので)同じ手で投げることになります。時刻3の左手の場所にはやはり数字の 2 がありますので、再び2単位時間後の時刻5に同じ手で投げることになります。これを繰り返せば

時刻 : 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
左手 : 2 2 2 2 2 2
右手 : 4 4 4 4 4 4
左手 :
右手 :

となって、左手の動きは全部決まりました。

今度は右手です。時刻1で投げるボールを青だとすると、次は4単位時間後の時刻5に、その次はやはり4単位時間後の時刻9に投げることになります。

時刻 : 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
左手 : 2 2 2 2 2 2
右手 : 4 4 4 4 4 4
左手 :
右手 :

まだ空きがありますので、もう1つ、黄色のボールを使いましょう。

時刻 : 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
左手 : 2 2 2 2 2 2
右手 : 4 4 4 4 4 4
左手 :
右手 :

これで全ての時刻がボールで埋まりました。左手は赤いボールを持ったままで、右手は2個のボールを交互に投げるという結果になりました。

シンクロの場合も、ボールの個数は数字の平均になります。今の場合は (2 + 4) ÷ 2 = 3 で、3個だということが分かります。

今度はもう少し複雑な (2x,4)(4,2x) を見てみます。このパターンは (2x,4)(4,2x)(2x,4)(4,2x)(2x,4)(4,2x)… という繰り返しになり、必要なボールの数は (2 + 4 + 4 + 2) ÷ 4 = 3 で、やはり3個です。

時刻 : 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
左手 : 2x 4 2x 4 2x 4
右手 : 4 2x 4 2x 4 2x

初めに左手に持っていた赤いボールは、x があるので時刻3には右手で投げられます。そして時刻3でも 2x となっているため、時刻5には再び左手に戻ってきます。

時刻 : 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
左手 : 2x 4 2x 4 2x 4
右手 : 4 2x 4 2x 4 2x
左手 :
右手 :

時刻1で右手から投げられた青いボールは (2,4) のときと同じ道をたどります。

時刻 : 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
左手 : 2x 4 2x 4 2x 4
右手 : 4 2x 4 2x 4 2x
左手 :
右手 :

最後に、時刻3に左手から投げられる黄色のボールも埋めておきます。

時刻 : 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
左手 : 2x 4 2x 4 2x 4
右手 : 4 2x 4 2x 4 2x
左手 :
右手 :

これはボックスと呼ばれるパターンで、2つのボールが交互に真上に上がり、もう1つのボールが左右の手の間を行ったり来たりします。ボールの軌道は 凵 という形を描きます。

ボールは左右の手を行ったり来たりすることはあっても、一方にどんどん集まってしまうということはありません。このことから

  • 1つのパターンに登場する x の数は左右で同数

という性質も導かれます。

シンクロも通常のサイトスワップと同様に、ジャグリング可能であるかどうかを判定することができます。

まず、シンクロパターンをサイトスワップパターンに変換します。左右の手で同時に投げているのを、右からスタートして左右交互に投げるものとみなしてしまうのです。(2,4) を見てみましょう。左手の投げを1単位時間ずつずらすので、

時刻 : 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
左手 : 2 2 2 2 2 2
右手 : 4 4 4 4 4 4
左手 :
右手 :

となります。あとは単に数字を順番に拾っていけば 424242… となり、(4,2) の類似パターン 42 に変換することができます。42 がジャグリング可能なパターンであることはすぐに分かります(詳細は 数理 を参照)。

今度は x の入る (2x,4)(4,2x) を見てみましょう。やはり左手の投げを1単位時間ずつずらすと次の図が出来上がります。

時刻 : 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
左手 : 2x 4 2x 4 2x 4
右手 : 4 2x 4 2x 4 2x
左手 :
右手 :

サイトスワップでは 2x というパターンは存在しませんので、これをただの数字に変換しなければなりません。今、左手の投げるタイミングを1単位時間遅らせました。ということは、その分だけ本来よりもやや急いで投げなければなりません。よって左手の 2x は 1 に置き換えます(同様に 4x なら 3、6x なら 5 に置き換えます)。

時刻 : 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
左手 : 1 4 1 4 1 4
右手 : 4 2x 4 2x 4 2x
左手 :
右手 :

右手の 2x はどうなるでしょう? 今度は左手が遅れた分だけ相対的に余裕が出てきます。従ってややゆっくりめに 3 で投げればいいことになります(同様に 4x なら 5、6x なら 7 に置き換えます)。

時刻 : 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
左手 : 1 4 1 4 1 4
右手 : 4 3 4 3 4 3
左手 :
右手 :

そして数字を順番に拾っていけば、4134 というジャグリング可能なサイトスワップパターンになります。